分析

業界カオスマップ:ステーブルコイン(2026年)

Stablecoin Intelligence Japan 編集部2026年4月4日

本記事では、公開情報を基に、日本市場に参入している主要プレイヤーの動向と、第三者情報に基づく各企業の信頼性検証結果をまとめました。本調査は、自社発表のみならず、メディア報道や提携先からの公式発表など、客観的な情報源に基づいて評価を行っています。

ステーブルコイン カオスマップ 2026

1. カオスマップ作成の背景と選定基準

2023年6月に施行された改正資金決済法により、日本は世界に先駆けてステーブルコインを「電子決済手段」として法的に定義しました [1]。これにより、発行体および仲介者には厳格なライセンス制が導入され、市場の透明性と安全性が高まっています。

本調査およびカオスマップの作成にあたっては、以下の基準で企業の選定と分類を行いました。

  • 信頼性評価「高」: 複数の信頼できる第三者メディア(日本経済新聞、CoinPost、あたらしい経済など)による報道があり、提携先や規制当局からの公式発表が確認できる企業。
  • 信頼性評価「中」: 自社発表に加え、一部の第三者報道が確認できるが、事業の本格展開やライセンス取得が未確認、あるいは間接的な関与に留まる企業。
  • 除外対象: 自社からの発信のみで、第三者による客観的な裏付けが十分に確認できなかった企業(信頼性評価「低」)。

2. カテゴリ別 主要プレイヤーの動向

発行体(銀行・信託)

銀行や信託銀行は、特定信託受益権(第3号電子決済手段)を活用したステーブルコインの発行を主導しています。信託財産による倒産隔離が特徴で、大口決済やB2B取引に適しています [2]。

  • 三菱UFJ銀行 / みずほ銀行: 3メガバンクによる共同発行構想を進めており、企業間決済向け日本円ステーブルコインの実証実験を行っています [3]。
  • 三井住友銀行: 3メガバンクによる共同発行構想に加えて、TIS、Ava Labs、Fireblocksと共に、ホールセール領域での決済利用やトークン化資産の決済手段としての活用を検討しています [4]。
  • ソニー銀行: JPYC株式会社と提携し、日本円ステーブルコインとの連携サービスを検討するほか、米国での米ドル建てステーブルコイン発行も計画しています [5]。
  • みんなの銀行: Solanaブロックチェーンを基盤としたステーブルコインの事業化に向け、TISなどと共同検討を開始しています [6]。

発行体(資金移動業・その他)

資金移動業者は、通貨建資産(第1号電子決済手段)として、日常的な決済や送金に特化したステーブルコインを発行しています。

  • JPYC株式会社: 2025年8月に国内初の資金移動業者(第1号電子決済手段)として認可を取得し、日本円連動ステーブルコイン「JPYC」を発行しています [7]。
  • GMOインターネットグループ: 米国NYDFSの規制下で「GYEN」と「ZUSD」を発行している実績があり、国内では野村ホールディングス等と提携し日本法に準拠したステーブルコイン発行を検討しています [8]。

グローバル・プロトコル

基盤となるブロックチェーン技術を提供するグローバルプロジェクトも、日本市場へ積極的に参入しています。

  • Ava Labs (Avalanche): 三井住友銀行やTIS、電算システムなどと提携し、マルチトークンプラットフォームの提供やユースケースの探索を行っています [9]。
  • Solana Labs: みんなの銀行やGMOインターネットグループなどのプロジェクトで基盤技術として採用されています [10]。
  • Circle (USDC): SBIホールディングスやコインチェックと提携し、日本国内でのUSDC取り扱いに向けた準備を進めています [11]。

インフラ・基盤

ステーブルコインの発行・管理・流通を支える重要なインフラを提供する企業群です。

  • Progmat: 3メガバンクグループが出資するステーブルコイン発行管理基盤「Progmat Coin」を提供しています [12]。
  • Fireblocks: デジタル資産のカストディおよび財務管理プラットフォームを提供し、SMBCグループやTISなどとの連携を発表しています [13]。
  • SBIホールディングス: Startale Groupと共同で、新生信託銀行を発行体とする日本円ステーブルコイン「JPYSC」の開発を進めています [14]。
  • 電算システム: Ava Labsや三井住友銀行、JPYCと提携し、コンビニ収納代行インフラを活かした次世代決済基盤の構築を目指しています [15]。
  • Startale Group: SBIホールディングスとの共同プロジェクトにおいて、コアパートナーとして技術開発を主導しています [16]。

システム開発

既存システムとの統合や、監査・業務自動化ツールを提供する企業です。

  • TIS: ステーブルコインシステム全体のインテグレーションサービスを提供し、SMBCグループ等と事業化インフラを主導しています [17]。
  • アステリア: 日本円ステーブルコインの会計監査を支援する「JPYC Explorer」や、企業向け秘密鍵管理ツール「JPYC Gateway」を提供しています [18]。
  • シンプレクス: ステーブルコインの発行・償還システム「Simplex Stablecoin」を開発し、Xspear Consultingと共同で事業開発支援を行っています [19]。
  • Datachain: Progmatとの協業により、プライバシーと規制対応を両立する基盤「Datachain Privacy」などを開発しています [20]。
  • NTTデータ: Progmatの株主としてデジタルアセット基盤の開発に出資しており、金融機関のステーブルコイン基盤導入を支援しています。

コンサルティング

法規制への対応や事業開発を支援するコンサルティングファームです。

  • Xspear Consulting: 親会社のシンプレクスと共同で、発行・取引業のサポートや事業開発を包括的に支援しています [21]。
  • finoject: AMLの高度化を推進し、金融庁の「FinTech実証実験ハブ」支援案件に採択されています [22]。
  • ソラミツ: 国内事業者向けの発行支援に加え、CBDCとステーブルコインを活用した越境決済プラットフォームの構築を進めています [23]。
  • 野村ホールディングス: GMOインターネットグループ等と共同で発行・流通の仕組みを検討し、金融庁の実証実験支援案件にも採択されています [24]。

仲介(取引業者)

一般ユーザーや企業に対して、ステーブルコインの売買や交換の場を提供する暗号資産交換業者です。

  • SBI VCトレード: 国内でいち早く米ドル連動型ステーブルコイン「USDC」の取引およびレンディングサービスを提供しています [25]。
  • コインチェック: Circle社と提携し、電子決済手段等取引業の登録を前提としたUSDCの取り扱いを準備中です [26]。
  • オーケーコイン・ジャパン: 暗号通貨型ステーブルコイン「DAI」の取り扱いを行っています [27]。
  • GMOコイン: GMOグループ傘下の取引所として、今後のグループ内ステーブルコイン事業との連携が期待されます [28]。
  • ビットフライヤー: 暗号通貨型ステーブルコイン「DAI」の取り扱いを行っています [29]。

セキュリティ・AML

安全な取引環境を担保するためのセキュリティ技術やAML(アンチ・マネー・ローンダリング)ソリューションを提供する企業です。

  • 日立製作所: 12社連合によるデジタルアセット取引におけるAML高度化の実証実験を主導しています [30]。
  • Sygna: トラベルルールに対応するソリューションを提供し、国内大手暗号資産取引所等での採用実績があります [31]。

参考情報

[1] 金融庁, "資金決済に関する法律の一部を改正する法律案 説明資料", https://www.fsa.go.jp/common/diet/217/02/setsumei.pdf

[2] PwC Japanグループ, "実務対応報告第45号「資金決済法における特定の電子決済手段の会計処理及び開示に関する当面の取扱い」の公表について", https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/prmagazine/pwcs-view/202403/49-05.html

[3] 日本経済新聞, "3メガ銀、企業間決済でデジタル通貨の実証実験", https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB078ZO0X00C26A1000000/

[4] 日本経済新聞, "三井住友銀、ステーブルコインで企業間決済 TISなどと", https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB015KJ0R00C25A4000000/

[5] CoinDesk, "Sony Bank Could Issue USD Stablecoin in US Next Year: Nikkei", https://www.coindesk.com/business/2025/12/01/sony-bank-could-issue-usd-stablecoin-in-us-next-year-nikkei

[6] TIS株式会社, "ステーブルコインおよびweb3ウォレットの事業化に向けた共同検討の開始について", https://www.tis.co.jp/news/2025/tis_news/20250704_1.html

[7] 日本経済新聞, "JPYC、日本円連動のステーブルコイン発行へ", https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB135M90T11C25A1000000/

[8] 野村ホールディングス, "GMOインターネットグループおよびLaser Digitalとのステーブルコインに関する協業の検討開始について", https://www.nomuraholdings.com/jp/news/nr/news20240527103021.html

[9] 三井住友銀行, "ステーブルコインに関する共同検討の開始について", https://www.smbc.co.jp/news/pdf/j20250822_02.pdf

[10] あたらしい経済, "GMOがソラナ基盤の日本円ステーブルコイン「GYEN」発行へ", https://www.neweconomy.jp/posts/562021

[11] SBIホールディングス, "米Circle社との包括的業務提携に向けた基本合意書の締結に関するお知らせ", https://www.sbigroup.co.jp/news/2023/1127_14248.html

[12] 日本経済新聞, "デジタル通貨基盤「Progmat」、3メガ銀などが出資", https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB160RA0W5A111C2000000/

[13] 三井住友フィナンシャルグループ, "ホールセール領域におけるステーブルコインの活用に向けた共同検討の開始について", https://www.smbc.co.jp/news/pdf/j20250402_01.pdf

[14] 読売新聞, "SBI、円連動のデジタル通貨発行へ…送金手数料を大幅に安く", https://www.yomiuri.co.jp/economy/20260318-GYT1T00008/

[15] 日本経済新聞, "電算システム、三井住友銀などとステーブルコイン決済で提携", https://www.nikkei.com/article/DGXZRSP695729_S5A820C2000000/

[16] PR TIMES, "Startale Labs、SBIホールディングスと共同で日本円ステーブルコイン「JPYSC」の開発を開始", https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000018.000114522.html

[17] 日本経済新聞, "TIS、ステーブルコイン決済基盤を開発 SMBCなどと", https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC1188X0R11C25A1000000/

[18] 日本経済新聞, "アステリア、JPYCと資本業務提携 経理システムと連携", https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC2192E0R20C25A8000000/

[19] 日本経済新聞, "シンプレクス、ステーブルコイン発行システム開発", https://www.nikkei.com/article/DGXZRSP695301_T10C25A8000000/

[20] PR TIMES, "Datachain、Progmatと協業しステーブルコインのプライバシー基盤を開発", https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000052.000055051.html

[21] Xspear Consulting, "シンプレクスと共同でステーブルコイン事業支援サービスを提供開始", https://www.xspear.co.jp/news/2047/

[22] PR TIMES, "finoject、金融庁「FinTech実証実験ハブ」支援案件に採択", https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000013.000157015.html

[23] 日本経済新聞, "ソラミツ、東南アジアとの越境決済網構築へ", https://www.nikkei.com/article/DGKKZO73431310X00C23A8EE9000/

[24] 日本経済新聞, "野村HDなど、デジタル通貨で証券決済 金融庁が支援", https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB304XL0Q6A130C2000000/

[25] 日本経済新聞, "SBI、米ドル連動のデジタル通貨「USDC」取り扱い開始", https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB181400Y6A310C2000000/

[26] コインチェック株式会社, "Coincheck、米Circle社と提携し日本市場でのUSDC取り扱いを準備", https://corporate.coincheck.com/press/TXO5XRuv

[27] PR TIMES, "オーケーコイン・ジャパン、ステーブルコイン「DAI」のPolygonチェーン対応開始", https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000064.000054229.html

[28] 日本経済新聞, "GMO、ステーブルコイン発行へ 野村HDなどと提携", https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB2771K0X20C24A5000000/

[29] ダイヤモンド・オンライン, "ステーブルコインとは?種類やメリット、今後の将来性を解説", https://diamond.jp/crypto/market/stablecoin/

[30] 日本経済新聞, "日立など12社、デジタル資産の資金洗浄対策で実証実験", https://www.nikkei.com/article/DGXZRSP704224_R10C26A3000000/

[31] あたらしい経済, "Sygna、トラベルルール対応ソリューションを国内取引所に提供", https://www.neweconomy.jp/posts/362948,

[32] 日経クロステック, "Progmatがセキュリティートークン管理基盤をSaaSで提供", http://xtech.nikkei.com/atcl/nft/column/051100005/110600880/

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